“幸福そうな国・日本” 2013年10月30日

秋の新しい企画展「古き良き江戸時代-外国人から見た日本」展が始まりました。

幕末の開国以後、日本を訪れ、また滞在する欧米人が急増しました。
軍人、外交官、通訳、教師など、身分はさまざまですが、
彼らの多くが日本で見聞した内容をまとめた「日本レポート」を残しています。

「他国民の物質的進歩の成果を学びとろうとする彼らの好奇心と、
それらをすぐに自分たちの用途に適用させようとする進取性をもってすれば、
彼らを他国との交通から隔離している政府の方針がゆるめられれば、
日本の技術は、すぐに世界の最も恵まれたる国々と並ぶ水準にまで達するだろう。
文明世界の今日までの蓄積をひとたび手にすれば、日本人は、
強力な競争者として、将来の機械的技術の成功を目指す競争に仲間入りするだろう。」
(『ペリー提督日本遠征記』)

黒船で日本にやってきて開国を迫ったペリーは、「未開の国」である日本が、
将来は「強力な競争者」になるとの見通しを語っています。
明治以降、欧米の科学技術を貪欲に学び取り、
アジアでいち早く「文明国」の仲間入りをした日本。
ペリーの予見は現実のものとなりました。

「日本を開国して外国の影響を受けさせることが、
果たしてこの人々の普遍的な幸福を増進する所以であろうかどうか、
疑わしくなる。私は、質素と正直の黄金時代を、
いずれの他の国におけるよりも、より多く日本において見出す。」
(ハリス『日本滞在記』)

アメリカの初代駐日総領事となったハリスは、
同じくこの「未開の国」の人々の「幸福」が、
海外の影響を受けることで損なわれるのではないかと危惧します。
ハリスが目にした日本人(とりわけ庶民)は、
みな貧しいにもかかわらず幸福そうに見える、というのです。

今回の展示で多くのヒントを得たのが、
渡辺京二『逝きし世の面影』(平凡社)です。
発刊以来高く評価されている書籍ですが、その理由は、
膨大な数にのぼる外国人の「日本レポート」を渉猟し、
また日本人による書物も参照しながら、
幕末から明治にいたる”失われた日本”のすがたを
客観的に描き出している点にあります。
是非一読をお勧めしたい書籍です。

また、展示を構成するにあたり、次のような外国人レポートも参考にしました。
展示でお伝えできる情報には限りがありますので、
上記の書籍と併せて、興味を持たれた方には
直接お読みいただきたいと思います。

マシュー・C・ペリー『ペリー提督日本遠征記』
タウンゼント・ハリス『日本滞在記』
ラザフォード・オールコック『大君の都』
ローレンス・オリファント『エルギン卿中国及び日本使節録』
イザベラ・バード『日本奥地紀行』
アーネスト・サトウ『一外交官の見た明治維新』
エドワード・モース『日本その日その日』 など

外国人が見た日本は、すべてが美しく喜ばしいもの
ばかりだったわけではありません。
例えばお歯黒や男女混浴など、外国人の慣習や倫理観からすると、
困惑するようなものもありました。
また、クリスチャンである多くの欧米人からすると、
日本人は宗教に寛容すぎる、あるいは関心が薄いように映ったようです。

生活が便利になり、貧しさもなくなったかに見える現代日本。
ですが「幸せ」かと尋ねられるとどうでしょうか?

幕末維新期の日本も、現代日本と同じで
決して良い面ばかりではありません。
生活は今より貧しく不便だったかもしれませんが、
今の私たちと比べて不幸だと言い切れるでしょうか?

今回の企画展は、当館ではこれまでにない試みです。
展示室も、大量の文字パネルと絵画パネル、
そして数冊の原書が並ぶという、これまでにない光景になっています。
ぜひ展示をご覧いただき、また関連書籍を読んでいただき、
ほんとうの豊かさとは何かを考えるきっかけを得ていただければ幸いです。

ペリー提督日本遠征記
『ペリー提督日本遠征記』より
中央にいる画家ハイネが写生をしているのを、大人も子供も珍しそうに取り囲んでいます。
追い払おうとしている役人も、どこかのんびりした様子。

サイオナラ
オールコック『大君の都』より
“サイオナラ”(さようなら)