波の音 2006年3月6日

館の2階南端、“空白のステージ“に立てば、はるか水平線を望む。
日によって、刻によって海の眺めは表情を変える。色もそうだし波の姿も違っている。
大学が休みに入ったのだろう、週末若者の姿が目立ってきた。館内が活気づいてくるのが分かる。
受験生もいた。青白い顔で彼は朝一番にやって来た。パワーを貰いに来たのだという。
神頼みならぬ、龍馬祈願。気持ちは良く分かる。頑張れと声援を送りたくなる。
彼は“空白のステージ”に立ち尽くした。水平線に目線を向け、学校で朝礼を受ける生徒のように、肩幅に足を開いて動かない。無念夢想。
その頭上から、お囃子みたいに「ザー、ザブン。シャラシャラ」。波音がかぶさってきた。波の砕け散る浜辺までは50メートルはある。沖から幾重もの棒状になって寄せてくるうねりが、はずみをつけて解き放たれて、潮をかむ。「ザー、ザブン、シャラシャラ・・・・」を繰り返す。
屋内にいて、波うち際にいる実感なのだ。
この仕掛け、実は事前に4パターンの波の音を収録したものを、その日の海の状態に合わせて流しているものである。静かな海、少し風、強風の海、台風襲来、荒れる海。状況に合わせてテープを交換する。
収録場所は館の真下。時にスタッフが波に追われて丘に逃げ上がったこともあった。
プロ野球のオープン戦が組まれていた日曜日、あいにくの天気になった。前夜からまるで時化模様。翌日も午前中は雨混じりの強風が吹き荒れた。
波の音は当然、“レベル4”であった。
強風に持ち上がる建物。激しい波音。「おっ、揺れとるぜ!」。おじさんが、思わず床を踏みしめている。本来、吊り橋様式で揺れる構造になっている当館ではある。だが、それにしてもこの日は入館者にとって、めったに味わえぬ体験をされた1日になったと思う。