北の大地・坂本直行(14) 2007年2月25日

直行展が始まって3ヶ月余り。すでに32,000人以上の方が直行さんに会いに来てくださった。そして、館内は今までにないほど土佐弁がこだましている。「チョッコウさんが・・・」「チョッコウさんは・・・」という来館者の声に、遠い北国で開拓農民や絵描きとして過ごした一人の男が、高知の人々にしっかりと受け入れられていることを実感している。
思えば1年前には、直行さんは関係者だけが知っているような人だった。私が直行展を開催したいと強く思った3年近く前には、本当に限られた人しか知らなかったし、直行さんのみならず龍馬に子孫がいるということすら余り話題に上らなかった。
龍馬のDNAを継承する人はたくさんいらっしゃる。また、親戚縁者も多い。龍馬を語る人、語らない人。それも様々。
直行さんは郷士坂本家の跡取り八代目。坂本家という看板や、祖父の叔父に維新の英雄・龍馬がいたことは大きな重荷だったのだろう。実業家として厳格だった父への反発や山への強烈なあこがれが直行さんの半生を支えている。自分自身の生き方を貫いた姿勢は龍馬に負けない。

直行展は佳境に入った。今月半ばに最後の入れ替えを終え、返却作業の段取りが頭に浮かぶ頃となった。これまでは開催や作品展示、来館者の受け入れ、各種の催しや販売のことetc。慣れない作業に慌しく毎日が流れていった。
今ようやく、ひととき直行さんに向き合う余裕が出来た。直行さんの著書も再度読み返している。直行さんの言葉、風景、気持ちが風のように心に入ってくる。展示している絵画や写真、お宿帳(原野と市街地での30年間に約600人が直行宅を訪れ、泊まり、交誼を重ねている。その記録)、等々。それぞれの光景が生き生きと迫ってくる。分からなかったこともパズルのようにカチッとはまってきた。
秋の農作業、冬支度に追われて、我が家の薪すら用意できずに、北風にさらされながら薪割をする直行さん。私もそんなふうに直行展の千秋楽を迎えるのかもしれない。それでも季節は巡る。
春到来。春はいつも直行さんに新鮮な感動をもたらした。記念館はまもなく、直行さんとともに開館以来200万人目のお客様を迎えることになる。感動とともに春が広がる。