北の大地・坂本直行(15) 2007年3月22日

先日私は、いの町の歴史愛好家たちがつくる「いの史談会」に呼ばれて直行さんの話をしてきた。30名近くの参加者の中には、会員ではないが直行さんに興味があって参加したという人もいて、2時間があっという間に過ぎた。熱心な質問も多かった。
会のメンバーは歴史を通じて自分を高めようという人ばかりである。そして、人生の先輩方である。私自身も皆さんに質問を投げかけてみた。
直行に「カムイエクウチカウシ連山のモルゲンロート」(坂本家所蔵)という絵がある。ツルさんが一番古いという、板に描かれた4号の小さな油彩だ。遠くの雪山や原野を包む大気が赤らんでいる。
私はこの絵の名前に興味を引かれていた。カムイ~はアイヌ語で神様のいる何とかという山の名前だろう。モルゲンロートは山を知っている人なら分かるのだろうが、手許の広辞苑とカタカナ語辞典にはないなぁ。と、曖昧なまま放っておいた疑問を問うてみたのだ。
小気味よいくらいの即答が返ってきた。
カムイエクウチカウシ山はアイヌ語で「ヒグマが転げ落ちるほど急な山」、モルゲンロートはドイツ語で「朝やけ」のことだという。いの町立図書館に勤める森沢さんに教えていただいた。森沢さんは十数回も北海道の山に登っているらしく、本のコピーも送ってくださった。私も斜め読みしていた「北海道の百名山」(道新スポーツ刊)を読み返してみた。
カムイエクウチカウシ、通称カムエクは日高第二の高峰。昭和初期から北大山岳部が登頂している。昭和7年には直行も冬季初登を果たしている。ツルさんが開拓時代の一番古い絵だといい、野崎さん(野崎牧場)の所にいた頃のものだというのも頷けた。
森沢さんをはじめご自身の登山や旅行、趣味、人生の体験を直行さんに重ね合わせている方は、まなざしや思いが深い。直行さんを通じて多くの対話が生まれていることだろう。
直行展の会期は残り10日。「カムイエクウチカウシ連山のモルゲンロート」は梱包され、札幌に帰る準備に入った。菜の花畑が広がる春爛漫の高知から、朝やけに染まる白い大地に直行さんが帰っていく日も近い。