北の大地・坂本直行(16) 2007年4月5日

反骨の農民画家「坂本直行」展が終わった。感無量である。
正直、4ヶ月半(141日)という会期は長かった。調査・準備期間を入れると優に1年半になる。旅行会社のチラシで飛び込んだ「韓国直行便」という文字に、「あれっ、直行さんは韓国に行ったことがあるのだろうか?」と思ってしまうほど、気持ちはいつもチョッコウさんに向いていた。いや、いつもと言うと語弊があるかもしれない。行き詰って、直行さんから逃げたい時もあったから…。
と言っても、絵画や資料をお借りするために北海道入りした昨年10月末。最初の坂本家で直行さんの絵が運び出された時の感慨は忘れがたい。いよいよ直行さんが海を越えて里帰りをする。初めて高知に行く直行さんをツル夫人はどんな思いで見ているのだろう。ここに来るまでの道のりは長かった。そんなことを考えていると、ガランとしたアトリエから直行さんの声が聞こえた気もした。様々な思いが交錯し、高揚する気持ちで絵画を送り出した日のことをはっきり覚えている。
札幌から帯広を巡った美専車が、北海道での最後の場所、広尾町の海洋博物館を出発した時も同じだった。太平洋を背にした車は一路高知を目指す。いよいよ海峡を渡って直行さんが高知に里帰りする。感無量であった。

会期中ご来館くださった多くの顔が浮かんでくる。会場にあふれた直行さんや直行一家の顔。直行さんの何人かの息子さん方も来てくださった。家族も知らない直行さんの顔もあったようだ。
北大関係者、六花亭、秀岳荘、直行さんの後輩達。“歩歩(ぽっぽ)の会”のメンバー。直行さんのファン、企画展を機にファンになった方達。多くの高知の人たち。会場で説明・解説しながら、教えられることも多かった。

週1,2度、入口に花を飾ってくださった郷田さんの最終作品のテーマは「三相」(=過去・現在・未来)。中心になる苔むした梅の木は“龍馬”(=才谷梅太郎)。古木に寄り添う野草、吾妻鐙(アズマアブミ=東国武士の馬具)は直行さん。「日本百名山」の深田久弥をして「古武士のような」と表された直行さんのイメージに合う。二人は過去から私たちを呼び止める。つぼみから咲いていったサクラの一枝は現在。古木の下方にはこれから白い花を咲かすだろうユキノシタが未来を指している。
今は未来であり、過去となる。記念館での直行展は終了したが、別の物語として未来に続いて行くだろう。訪れた4万7千人余りの方たち、訪れることはなくても直行さんを知った方たちが、これからも直行さんを語り続けてくれることを信じている。龍馬と同じように。
多くの皆様に言葉にならないくらいの感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。