北の大地・坂本直行(17) 直行展その後 2007年5月5日

話は1ヶ月近く遡る。
4月初旬、直行さんの作品群は北海道に帰っていった。4ヵ月半に及ぶ、反骨の農民画家「坂本直行」展が終わったからで、私も直行さんの絵や資料とともに北海道に出かけた。
私の立会うもとで梱包が取り除かれ、坂本家の直行さんのアトリエには絵画が元通りに納まった。「あぁ、これでやっと元の我が家に返ったわ。」と夫人のツルさんは目頭に涙を溜めていた。「淋しかったでしょう。申し訳なかったですね。」という私に、泣き笑いしながら「淋しかったですよ。」と言っておられた。
毎朝、直行さんの写真の前にお茶を置き、花を飾る部屋に、大好きな日高の風景がない5ヶ月。本当に淋しかったと思う。しかし、夫の絵が祖先の地に里帰りしたことにはいささかの感慨を持っていただいたとも思う。
そんなこともあって、今回の返却作業の合間を縫って、私は札幌市円山にある坂本家の墓地を訪ねた。直行さんにもひと言お礼を言いたいと思って・・・。
冬場に墓参りなんてしない。墓は雪の中にあって分からないからという北海道の人の言葉にびっくりしていたが、実際に4月初旬でも、墓地は融けかかった積雪の中にあった。はっきりした場所も知らないまま出かけていたので、雪の中に足を滑らせながらしばらく探し回り、ようやく見つけた坂本家は、直寛の大きな墓石を先頭に静かに佇んでいた。そして私は、『坂本家の人々ここに眠る』という直行さんの墓碑の前で、今回の直行展の報告をすることができた。
札幌、帯広、広尾と回り、直行さんは北海道に帰って行った。私は返却作業を終えた後、オホーツク海近くの北見市まで足を伸ばしてみた。直行展開催2日目に館に来てくださった北見市の方の熱心な誘いがあったからだ。
北見は、龍馬の甥で直行の祖父・坂本直寛が開拓会社「北光社」を作り、坂本家をあげて土佐から移住して行った土地。その話は次回にしよう。