“会いたい”思い 2008年10月26日

 見つめ合った瞬間、もう目が赤い。
親指と人差し指が目頭にゆく。
口元は震えていた。
「やえきさん!覚えちゅうかね。須崎の!」
「分かる、分かる!すさきの ○○さん!」
男同士、握り合った手がもう抱き合っていた。

館の「海の見える・ぎゃらりい」が今、演歌そこのけ、“涙の再会場”になっている。
ギャラリーでは洋画家、挿絵画家の吉松八重樹さん(82)の油絵と挿絵の展示している。
題して「吉松八重樹と故郷との出会い」展(11月16日)
上野の森美術鑑賞を受賞した大作50号の油絵、川端康成もほめた「雪国」駒子の挿絵。
約100点が並ぶ。
東京在住の吉松さんは地元浦戸の出身である。
ただ、機会に恵まれず、30年ぶりの帰郷となった。
地元の人たち、吉松さん、互いの“会いたい”思いがスパークしたのだ。

次から次へと現れる友人、知人。
見つめあい抱き合う。
取り巻く絵と広がる海が、時代の歯車を逆回転させ、止める。
幸せ気分が館内に満ちてゆく。
「涙を流して体重が軽くなりました」三日目、ベレー帽の吉松さんは言いながらもう涙であった。
窓の外は、季節を急ぐ秋雨が、灰色の海に消えてゆく。