展示室に入らぬ展示物 2005年9月14日

館の中二階で、先ごろお亡くなりになった小椋前館長をしのぶ追悼展を始めた。
小椋館長は、開館当時から館長をお勤めになった、功労者である。
館の歴史そのものと言ってもいい。
生前の30枚近いパネルに、そのまま温厚な人柄が覗いている。
「龍馬の手紙」を館の売り物に置いたアイデアも小椋さんの発案と聞いている。
それに、現代語訳をつけたのもやっぱり小椋さんだった。
独特の“小椋節”が窺える訳文は、実に楽しい。
その手紙を、若い入館者が熱心に読んでいる。
ガラスのケースの中に吸い込まれるのではないか、そう見えるほどの熱心さなのである。
海に向かって立つ館は、館内に展示する資料類にとっては、潮風などの影響もあり、環境は好いはずがない。
そんなこともあって、「記念館には資料が少ない」などとの陰口がささやかれた。
中には、面と向かっての忠告もあった。
しかし、小椋さんは少しも慌てず、こんな風に切り返した。
「実は好い展示物があるのですよ。でも、あまりに大きすぎて展示室には入らないんです。
外に展示してありますので、よく観て下さい」
そして、館内の最先端から、眼前に広がる太平洋を指差したという。
その海は、まさしく龍馬の見た海である。
さて今日の海は、果てしなく青く遠い。
白い雲を従えて、呼んでいるのが分る。
その声を聞いて、先日の総選挙結果で起きた頭痛が、やっと消えた。