記念館雑記帳
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夏休み子どもフォーラム「龍馬が龍馬になったとき~ゆすはら脱藩の道~」を開催しました

夏休み子どもフォーラム「龍馬が龍馬になったとき~ゆすはら脱藩の道~」を開催しました

当館が設定した龍馬や幕末期のキーワードを調べることによって、子どもたちの考える力や表現する力を育むことをめざし、毎夏に開催する「夏休み子どもフォーラム」。今年は、「脱藩」「志」をキーワードに、吉村虎太郎邸(高岡郡津野町)と龍馬脱藩の道と「維新の門」(高岡郡梼原町)をたずねました。

8時30分に高知駅を出発したバスは、津野町をめざして走ります。バスの中では、龍馬クイズやこれから訪ねる吉村虎太郎や脱藩について、亀尾美香学芸員からのお話で予習をしました。坂本龍馬はみな知っていますが、吉村虎太郎は知らない人も多かったようです。

10時30分、津野町の山間部に位置する吉村虎太郎邸に到着。移築された虎太郎の家には年表や関連する資料が並び、まさしく虎太郎記念館。参加者は、亀尾学芸員や吉村虎太郎社中代表の豊田さんに質問するなど、熱心に見学。1時間があっという間にすぎました。虎太郎邸の縁側からみる山の稜線や川の流れは、彼が生きていた頃からほとんど変わっていません。今、眺めている風景とほとんど同じ風景を虎太郎がみていたのでは、と感動していた参加者もいました。(ちなみに、虎太郎邸の前を流れる川で釣れる鮎はとても美味しいそうです。)

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12時、梼原町に到着。集落活動センターゆすはら東で、梼原町の食材をつかった特製おべんとうをみんなでいただきました。そして、その後13時頃、今回のメインとなる「脱藩の道」をめざして、出発しました。

梼原町のメインストリートで―「津野山神楽」のオブジェや隈研吾氏の建物を見るながら-をのんびり歩いて、三嶋神社へ。三嶋神社では龍馬さんが私達の到着を待ってくれていました!(梼原龍馬会の西村会長です。)龍馬さん(西村会長)の案内で、いよいよ三嶋神社から脱藩の道です。本当はとても長い道ですが、今回は、ほんの一部だけふれる「脱藩体験」でした。それでも、急な坂道にみな苦労したようです。

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脱藩の道からアスファルトの道にもどり、梼原から脱藩した志士たちの銅像「維新の門」に到着。これは、高知県内で多くの銅像を手掛けている浜田浩造さんによる、龍馬と虎太郎を中心とした8人の群像彫刻です。細部まで作りこまれ、リアルな表情やダイナミックな動きを表した彫刻は見ごたえがあります。みんなで、この銅像をみながら、ひとりひとりの人物についての説明を聞いたり、考えたりしました。

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1時間ちょっとの「脱藩体験」(県境を越えた、"本当の脱藩"ではありません)を終え、集落活動センターゆすはら東に戻り、まとめの作業です。脱藩することの重大性(脱藩は罪です)を学び、(ほんの少しとはいえ)脱藩の道を実際に歩くことで、龍馬や虎太郎がどんな思いで脱藩したのか、ということを参加者のみなさんは考えることができたのではないでしょうか。

まとめを書いたあとは、オプショナルツアー。短い時間ですが、希望者による梼原の町歩きを楽しみました。幕末の志士のひとり、掛橋和泉邸や、昔の芝居小屋「ゆすはら座」、隈研吾氏の建築で話題の「雲の上の図書館」を見学しました。

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すべてを終了し、15時30分頃、梼原町を出発し、帰路につきました。17時30分、高知駅に到着。解散となりました。こうして、令和元年度の「夏休み子どもフォーラム」は無事に終了しました。

★まとめ作業として、参加者に書いてもらったワークシートから少し紹介します。

●虎太郎は脱藩したとき、どんな気持ちだっただろう。

 ・大きな不安があったと思う。これから自分がどうなるのか、家族がどう思うのか、どんなあつかいをうけるのか、それでも自分自身ができることをやりきり、最後のとき、こうかいのないようにしたいと考えたと思う。

●虎太郎の行動をどう思う?

 ・勇気ある行動。今まで脱藩した人がいない中で自ら危険の多いであろう道をいこうとするのはかるい気持ちではできることではないと思う。

●龍馬はどんな志を持って、脱藩の道を走ったと思いますか?

 ・龍馬は少しだけ土佐藩をぬける悲しみがあるまま走ったと思います。

 ・かってに脱藩をするとつかまると分かっていても自分の考えで自由に行動したいという志を持って脱藩の道を走ったと思いました。小さな国でおわらずに外国と戦えるような強い国にしようと思っていた人だと思います。

 ・ぜったいにばくふのゆう(ママ)にさせない。/さつまと長州を仲良くさせて、ばくふをたおせば天皇が上の人になって幸せになれる。/おとめ姉やんには悪いけど、日本をかえんといかんき、どうしても土佐を出ないかん。/土佐を出て、どうしてもやらないかんこともあるし、土佐にはおさまりきらん人物だから。/日本を変えて、戦のない世界にしたい。

●虎太郎はどんな志を持って、脱藩したと思いますか?

 ・坂本龍馬といっしょのように大政奉還をしてちょっと世界をかえたいと思っていた。

 ・龍馬とは似ているけど、早く平和な1つの国にしたいというのがぼくの考えていることです。

●2人にとって「志」とは?そして、あなたの「志」は?

 ・龍馬と虎太郎2人にとっては、すごく大きいことで命をかけていたけど、今この平和な日本では命をかけると言うよりも、自分が他の人に何を言われようとおれずに夢へむかっていくと言うのがぼくの志です。

 ・2人は自分の国がいい国になるように志、高知から脱藩したんだと思いました。自分は人に優しい人になりたいと思いました。

 ・龍馬や虎太郎など脱藩をした人も何かを良くしたいという「志」を持っている。自分の「志」は、龍馬さんのように、世の中を変えたい。世の中の先を見る目を持って、人々の為に自分が何をできるかこれからも考えたい。

歴史を学ぶというと、人物名や出来事を覚えたり、年号を語呂合わせで暗記したり...と「覚える」学習と思いがちです。そうした情報を知ることも大切で必要なことです。同時に、歴史の現場となった場所(史跡や遺跡)に、実際に身をおいて初めて感じること、わかることもたくさんあると思います。史跡に立ち、感じたり、想像したり、考えたりする体験を大切にし、「歴史は面白い!」と実感してもらえるような普及事業をこれからも行っていきたいと考えています。